とってもハードな準備のかずかずを経て、子供のためのオペラ公演が終わった。今回は今までの公演のなかで最多出演者、楽器もピアノのほかに笛や鈴の音のためのシンセサイザーが必要であり、そのほか衣装や怪物の特殊な大道具も重要とあってほんとうに何もかもが大変な催しだった。でも、中心になって牽引してくれた大学院生がよくやってくれた。まず、出演者の配役と能力が確かな人選だったことと、演出や段取り、細かい事務的な作業もできる几帳面さが彼にあったことが成功のカギだった。音楽家としての才能がありうまく歌えさえすればよい、ってものじゃないところが自主オペラの難しいところだ。さすがに疲れが出たのだろう、2日前のゲネでは少し体調を崩していて心配したけれどなんとか乗り切ってくれてよかった。

お客様としては予定人数(70名)を少し超えた結果で、秋の行事が盛りだくさんのこの時期にそれらの予定をくぐり抜け、よくお越し頂けたと思う。直前のご予約が予想外にたくさんあったのと、公演まで1週間を切ったときに30歳未満の大人には単独での予約をOKした(facebookでの告知)ので 5名増えて、最終的にはパーフェクトな状況の集客になった。ただ、1万枚のチラシ効果はほとんど無くて、知人とその方々の直接の声掛けによる結果だ。それについては残念ではあったけれど、やってみなければ分からないことなので、データを得たのは有難い。私はいったん撒いたチラシが残っていれば回収し、最後までポスティングの努力はした。そして住所録を引きずり出して、「たしか子供がいたはず、、、」という曖昧な記憶の底を掘り、あるいは「赤ん坊が生まれたらしい」乳幼児の親にまでお知らせをした。旧い知人は何事かとビックリしただろうと思う。でも、この執念のエネルギーで琵琶湖の奥地方や神戸という遠方からも呼び寄せることができ、生後6カ月から高校生まで(もちろん赤ん坊2匹の御代金は頂いてませんが)、33名の子供たちはこの時間を楽しんで帰ってくれたのではないかと思う。

終演後にご挨拶をして、「オペラをはじめて観た人?」や、「もう一回、観たい人?」の挙手を促すと、たくさんの手を挙げてもらって嬉しかった。もっとも、それは会場の様子を見ているとなんとなく予測できたことではある。なぜなら公演中に騒いだりソワソワする子はなく、みんな釘付けで舞台に集中していたからだ。子供は正直だから、退屈すれば退屈したという態度になるだろう。今までの催しではアンケートなどお願いしたことがなかったけれど、今回は記入して頂くことにすると、幸いたくさんのよい言葉をもらうことができた。せっかくなのでいくつかスキャンしてみました。








 
主催者として、頂いてしみじみ嬉しい感想の数々です! しかし生涯はじめてのオペラ観劇がこれだったというのはラッキーですよ、、、、ホント(笑)。じつはこの演目には矛盾した筋書きや難しい場面も多く存在している(大人が観ても、「ワケわからんな?」と思う箇所がある)のだけれど、その部分はすっ飛ばして大切なところだけを抽出し繋いだものをつくってもらいました。もっとも、環境的に制約や限界がある以上、すべてを演るのは所詮無理ですが、私は、魔笛は、今回のようにまず省略形で観るのが最適な演目ではないかとずっと感じてきました。体験の最初に面白いものに当たることはとても大切です。そして、オペラそのものの最初の一歩にこの演目はひじょうに有効なのです。こうしてわざと「子供のために」と銘打って雛型をつくり、じつは同時に大人に向けてもこの形でこつこつとロングラン上演していけば、オペラファンはきっと少しずつ増えるに違いないと思うのですが!

モーツァルトがなぜにこれをつくったのか。

しかも、死ぬ2ヶ月前のことです。

上流階級の娯楽だったオペラを大衆に開放したかったのでしょうね。誰が観ても飽きないように、要素をいっぱいいっぱい詰め込んで。キラキラ激しい人や純粋な若者、異人種や怪物まで登場させました。不思議な楽器の音色もたくさん。そしてなにより、芝居はふつうの言葉(ドイツ語)です。それまでのオペラはイタリア語がほとんどだったので庶民には理解できませんでした。台本はモーツァルトの友人の執筆。二人で相談しながら、庶民にオペラを届けたんですね。

魔笛の大成功を見届けてから、モーツァルトは亡くなりました。

モーツァルトの最大の功績は、生涯の最後に魔笛を書いて死んだことだと私は思います。さすが、大したことをやってくれますわ(笑)。彼は人生にたくさんの曲をつくったけれど、一番最後に、一般庶民に気持ちを向けて亡くなったんです。宮廷のお抱えから市井の人へ。アヴァンギャルドだよ、やられちゃったよ、まったく。

私も、今回の公演で、とりあえずは33人の子供たちにオペラというものを観てもらえたので、それが「アイツの生涯の最大の功績やったな」と思ってもらっていいです(笑)。ええ、ほんとうに僅かな人数でしょうけれど、それでもいいんですよ。個人の力では限界点の企画ですから。実家での音楽会をはじめてから、ずっと、いつかは子供用のことをしたかったので、これでまぁ、もう気が済みました。終演後にたくさんのお客様が出演者たちと記念撮影をしているのを見て、とっても幸せ〜な気持ちになりました。しんどかったけど、やってよかったよ〜 助けてくれた皆様、ご来場いただいた皆様、ほんとうにありがとうございました。

誰かがどこかでこの企画を聞きつけてくれて、私みたいなヨレヨレがやるのではなく、行政かお金持ちの誰かが主催を続けてくれないかなぁと思います。これは私の店が潰れていた期間なので出来たようなものでして(笑)、飲食業をしながらではとうてい無理でした。そしてご報告ですが、この日の打ち上げ会で、ついに! 店での飲食が復活しました。出演者に「店のどこが壊れていたんですか?」などと間抜けな質問を受けながら。まっさらの壁がどこだかわからんか〜?  と。1年4カ月ぶりに大量のコップとお皿の洗いもの。最後まで残っていたメンバーとともに夜中の3時まで話をして、ようやく解散しました。飲食店というのはやはりコミュニケーションをとるために存在するんですね。メンバーそれぞれの幸せな将来を願いながら、彼らを見送り、長い一日を終えました。